(編集長の独り言)完全アウェイ

法会労メールマガジンのバックナンバーで配信した編集後記のうち,比較的評判が良かったものを「編集長の独り言」として整理・再掲載しています。


サッカーでアウェイの試合というと敵地での試合として,転じて自分にとって居心地が悪い場所や場違いな雰囲気を指してアウェイと表現することがありますね。

アウェイでは,居心地が悪く場違いということもあり,人間の弱さや強さ等,本性を垣間見ることができます。

私が学生の頃,あるカルト的熱狂ファンがいるビジュアル系バンドのボーカルと従兄弟の関係にある友人がいました。
その縁あって,友人がそのバンドのライブチケットをくれたのでした。

では何事も経験,とばかりにその友人と,別の友人で硬派なバンドでベースをしている3人で武道館にライブを見に行ったのでした。

武道館に向かう道すがら,我々3人は街歩きをするようなTシャツ・ジーパンといった典型的なカジュアルな格好なのに対し,歩道は,何やら怪しげな白と黒しか色のない毒々しい看護師さんを模したような服で身を包んだ独特な風体をしている人々で埋め尽くされているのでした。

「人間だもの」などとのんきなことがプリントされている我々のTシャツとは対照的な人々に,既にその時点でアウェイ感満載でした。
武道館と言えば13,000人程を収容できる巨大施設。入場するとどこもかしこも毒々看護師だらけ。完全に場違いな3人が黙って佇んでいるのでした。

そして,ライブ開演。周りの毒々達が一斉に立ち上がり,バンドのメンバーの動きに合わせ,どこで覚えたのか一糸乱れぬ振り付けで動き出すのでした。

ことここに至り,本性が現れてきます。

硬派なバンドマンベースの友人は,さすがは硬派,周りの状況など我関せず座って音楽を聞いています。バンドボーカルと従兄弟の友人は,振り付け完全にコピーしています。なんで「人間だもの」のTシャツを着て来たのかだけが不思議でした。

そして私,友人2人が音楽を聞いているのに私だけ帰るわけにはいきません。
しかし座っていれるほど強い心は持ち合わせていません。
立って何もしないのも気が引けます。

結果,立って周りの振り付けを下手くそに真似て,奇妙な手足の動きと,ときに発する「ヒュー」という奇声と,よく分からないけどお決まりのセリフとをこなし,ひたすら頑張って真似しましたよ。その場を乗り切りました。13,000人におもねったわけです。

一切興味のない音楽に,あのときかいた変な汗,「ヒュー」などと大声で言ってしまった自分,完全アウェイとは恐ろしいものですね。

(編集長)